たかありブログ

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目黒 (略)それでさ俺はもうひとつ疑問に思っていることがあるんだ けど、椎名は「本の雑誌」を創刊してなくても作家になって いたと思う?

椎名 えーとね、断言はできないけれど、作家になってなかったと思う。

目黒 そうか。

椎名 やっぱり小説って、よっぽど何か大きなめぐりあわせというか、気運というかね、あるいは本人の努力でいいもの 書いて文学賞に応募して賞をもらうとかなにかないかぎり は、作家にはなれないですよ。俺が作家になったのも、よーく考えたら「本の雑誌」に書いていたものが世間に少しずつ 認められていったのがあって、たとえば最初に出した「さらば国分寺書店のオババ」なんていうのは、「本の雑誌」の五号に書いたものに目をつけた編集者が会いに来てくれたんだよね。

目黒 編集者が「本の雑誌」を読んでたわけね。

椎名 それで「この話、おもしろいですねえ。 何か書きませんか」って言われてさ。 そもそも俺は流通業界誌という堅い 雑誌の編集長で、「前年同期比××.××パーセントで」とか「資本金〇〇万円で」とかそういう経済記事を書いてたわけじゃん。だからそれとはまったく別に、フリーに書ける、 昔「おれの足」に書いていたころのようなものを書けるのは、 かなり嬉しくてさ。しかも楽しく書けば面白いものができる っていうのもあるじゃない。そういう場がないと俺は作家に ならなかったと思うな。